序章 ~「働く意味」を育てなければいけない時代~
今の時代、多くの仕事は“モノ”を介して成り立っています。
メーカーも。
小売業も。
ECサイトも。
お客様は商品を見て、購入し、その満足や不満を口にします。
もちろん、その仕事にも大きな価値があります。
ただ、その声の多くは“商品”に向いています。
「この商品は便利だった」
「品質が悪かった」
「壊れやすい」
つまり、お客様の評価対象が“モノ”であることが多いのです。
だから時には、
「それ、私自身のことではないですよね?」
と、少し距離を置くこともできます。
しかし美容業界は違います。
美容には“モノ”が介在しません。
もちろん薬剤や道具はあります。
ですが、お客様が見ているのは商品ではなく、“人”です。
技術。
接客。
空気感。
表情。
会話。
気遣い。
その全てが、自分自身に向けられます。
だから美容の仕事は、とても大変です。
逃げ場がありません。
技術だけでは通用しません。
人として信頼される必要があります。
だからこそ、やりがいも大きいのだと思います。
自分の関わり一つで、お客様の表情が変わる。
落ち込んでいた人が笑顔になる。
自信を失っていた人が前を向く。
人生の節目に関わる。
美容の仕事は、単に髪を切る仕事ではありません。
“人の人生に触れる仕事”です。
そして実は、自分の手でここまで直接的に人の人生へ関われる仕事は、そう多くありません。
だから私は、美容業界にはまだ大きな価値が残っていると思っています。
しかし今、その価値が当たり前になりすぎているのかもしれません。
SNSでは、
売上
指名数
高歩合
自由な働き方
ばかりが目立ちやすい。
その結果、「どれだけ稼げるか」だけで仕事を考えやすくなっています。
もちろん、お金は大切です。
ただ、美容の仕事の価値はそれだけではありません。
お客様から直接感情が返ってくる。
良い反応も、厳しい反応も返ってくる。
それだけ“人”として向き合っている仕事なのです。
だからこそ美容業界には、技術教育だけではなく、“人として成長する教育”が必要なのだと思います。
技術が上手いだけでは続きません。
人として信頼されること。
人の気持ちを理解すること。
相手の人生に関わる責任を持つこと。
そういったことまで含めて、美容の仕事なのではないでしょうか。
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‣第3話 「教えることにも給料をつけてほしい」