序章 ~「働く意味」を育てなければいけない時代~
美容業界では昔から、
「お客様のために頑張ろう」
という言葉がよく使われてきました。
もちろん、この言葉自体は間違っていません。
美容の仕事は、お客様に喜んでいただく仕事です。
髪型が変わることで、自信を持てる人もいます。
落ち込んでいた気持ちが前向きになる人もいます。
人生の節目を美容室で迎える人もいます。
だから美容の仕事は、単なる“作業”ではありません。
人の人生や感情に関わる仕事です。
しかし今、この言葉が以前ほど自然に伝わらなくなっているように感じます。
それは若い世代が悪いのでしょうか。
私は、そう単純な話ではないと思っています。
考えてみれば、私たちは小さい頃から、
●親の言うことを聞きなさい
●先生の話を聞きなさい
●友達を大切にしなさい
とは教わります。
しかし、
「お客様を大切にしなさい」
とは、ほとんど教わりません。
つまり社会に出るまで、“お客様”という存在と本気で向き合う経験が少ないのです。
だから美容学校を卒業し、社会に出た途端に、
「お客様のために頑張ろう」
と言われても、
「そもそも、お客様って何ですか?」
となってしまうのも無理はありません。
しかも今の若い世代は、SNSで毎日のように“カスハラ”の記事を見ています。
理不尽なクレーム。
怒鳴るお客様。
炎上。
その情報ばかりが流れてくる。
すると、お客様という存在が、
「感謝される相手」
ではなく、
「怒らせてはいけない相手」
になってしまうことがあります。
つまり、“畏怖の対象”として認識されてしまっているのです。
しかし本来、お客様とはそういう存在だけではありません。
お客様とは、
自分たちにお金を払ってくださる存在であると同時に、
「ありがとう」
という“心を支える報酬”を与えてくださる存在でもあります。
つまり、
お金=生活を支える報酬
感謝=心を支える報酬
この両方を与えてくれる、ありがたい存在なのです。
だからこそ美容業界では、技術だけではなく、
「誰のために働くのか」
を伝える教育が必要なのだと思います。
お客様は怖い存在ではなく、
自分の成長や働きがいを支えてくださる存在でもある。
その感覚を育てること。
それこそが、これからの時代に求められる教育なのではないでしょうか。
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‣第2話 「お客様って新キャラですか?」