序章 ~「働く意味」を育てなければいけない時代~
美容業界では昔から、「先輩が後輩を育てる」文化がありました。
営業後にレッスンを見る。
できるようになるまで何度も伝える。
落ち込めば声をかけ、人間関係の相談にも乗る。
自分もそうやって育ててもらったから、次の世代へ返していく。
そんな文化が、美容業界にはありました。
もちろん、昔のやり方が全て正しかったわけではありません。
理不尽な上下関係や、長時間労働もありました。
ただ一方で、“人が人を育てる文化”そのものは、業界の大きな価値だったのだと思います。
しかし今、その構造が成立しにくくなっています。
なぜなら、「教える側」に余裕がなくなっているからです。
例えば、
営業が終わった後も残り、レッスンを見る。
できるようになるまで何度も伝える。
落ち込めば声をかけ、人間関係の相談にも乗る。
こういった育成には、技術だけではなく、
が必要です。
しかも、それがすぐ売上になるわけではありません。
さらに最近では、
「教えてもすぐ辞める」
「レッスンを見てあげているのに、本人はイヤイヤやっているように見える」
そんな経験をする先輩スタッフや店長も増えています。
すると次第に、
「ここまで時間を使って教えているのに…」
「こんなに割に合わないなら、教えることにも給料をつけてほしい」
という感情が生まれてきます。
これは決して、冷たい考え方ではないと思います。
むしろ、それだけ本気で向き合ってきたからこそ出てくる言葉なのかもしれません。
しかし一方で、オーナーや上司世代からは、
「お前たちも、そうやって育ててもらっただろ」
「教えるのは当たり前だ」
と言われることもあります。
たしかに、それも間違ってはいません。
美容業界は昔から、“人が人を育てる”ことで技術や文化を継承してきた業界だからです。
ただ問題なのは、
今の時代は“教える側”の負担が、以前よりはるかに大きくなっていることです。
SNS。
価値観の多様化。
離職率。
業務委託化。
昔よりも、「頑張れば報われる」と信じにくい時代になっています。
だからこそ今、教育を“善意”だけで成立させることが難しくなっているのです。
これは、若い世代が悪いわけでも、教える側が悪いわけでもありません。
時代そのものが変わったのだと思います。
だからこそこれからは、
「人を育てることは大切だ」
という精神論だけではなく、
“人を育てることが、経営として成立する仕組み”
を作ることが必要なのではないでしょうか。
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‣第1章-第1話 「もっと稼げる」が正義になる時代